
「また今日も残業か……」
2023年の晩秋、私は東京・品川のオフィスで、Excel画面を睨みながら溜息をついていました。部署の予算報告書の作成。毎月繰り返される、あの単調で気の重い作業です。ところが、その1か月後。Windows 11に統合されたMicrosoft Copilotを使い始めてから、私の働き方は一変しました。AIアシスタントというと「便利ツール」程度の印象を持つ方も多いでしょう。しかし実際は、それ以上の存在です。まるで、頼れる同僚が隣に座ってくれたような感覚──。今回は30年以上にわたるIT業界での経験と、直近2年のCopilot導入支援の現場から得た知見をもとに、この「相棒AI」の本当の価値をお伝えします。
1. 最初の出会いは、期待外れだった
導入当初、私はCopilotに対して懐疑的でした。「所詮は検索エンジンの延長線だろう」と。実際、2023年11月に法人アカウントで初めて触れたとき、返答は的外れで、求めていた資料のフォーマットとはかけ離れていたのです。
ところが、使い方を変えてみました。「昨年度の予算比較表を作って」という曖昧な指示ではなく、「2022年度Q4と2023年度Q4の営業費を、Excel形式で5項目に分類して比較してください。各項目には前年比の増減率も表示してください」と具体的に伝えたのです。すると──画面に現れたのは、ほぼ完璧な表組みでした。
このとき私は気づきました。Copilotは「命令の精度」に応じて、出力の質が劇的に変わる存在なのだと。人間の部下に仕事を振るときと同じで、曖昧な指示では曖昧な結果しか返ってきません。逆に、意図を明確に伝えれば、驚くほど期待に応えてくれます。
一般的なAIツールとの違いは、Microsoft 365エコシステムとの深い統合にあります。WordやPowerPoint、Teamsといった業務アプリに自然に組み込まれているため、わざわざ別のウィンドウを開く必要がない。これは些細な違いに見えて、実は作業効率に大きな影響を与えます。調査によれば、アプリケーション間の切り替えだけで、1日平均23分のロスが発生するとされています(カリフォルニア大学アーバイン校、2016年調査より)。Copilotはその無駄を削ぎ落としてくれるのです。
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